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わたしは最悪。 Comments (9)
フィクションゆえに誇張されている面ももちろんあるが、自分のキャリアの選択はこれでいいのか、今のパートナーとずっと一緒でいいのかなど、誰もが一度や二度は覚えがある悩み、劇中に「自分探し」というワードも出てくるし、そんな普遍的な題材に共感する人も多いだろう。また、年齢の離れた相手と交際した経験がある人なら、ユリヤとコミック作家アクセルとの関係にきっと自身の記憶を重ねてしまうはず。
基本はリアリズムの描写で語られるが、予告編でも示されているように、マネキンチャレンジのように静止した街の中をユリヤが駆けていくシーンと、マジックマッシュルームを食べて幻覚を見る場面で、リアルから逸脱したファンタスティックな視覚効果が使われているのも印象的だ。
余談めくが、ちょうど3年前の2019年6月に北欧を旅行しオスロにも2日ほど滞在した。市内には「テネット」のロケにも使われた美しい外観のオペラハウスや、ノーベル平和賞授賞式会場として知られるオスロ市庁舎にも近いベイエリアなど、見栄えのいいロケーションも多々あるが、そうした観光名所を敢えて避け、欧州の都市のそこかしこにありそうな“素顔の街並み”を背景に撮影しているのは、デンマーク出身ながらノルウェーのオスロで育ち、同国で作品を発表し続けてきたヨアキム・トリアー監督ならではだろう。
ヨアキム・トリアー監督は、遊び心溢れる独創的な映像と音楽で主人公ユリヤの心情を映し出す。彼女が芸術の都オスロを眺めながらひとり帰途につくシーンや、それまでの自分から解放されたかのような表情で街の中を駆けてゆくシーンが印象的だ。ユリヤを演じたレナーテ・レインスベは、まるでユリヤが自分の中のいくつかの人格と対話するかのように、子供のような無邪気さと愚かさ、さらに大人のずるさと賢さが混在する年代の感情の揺れ動きを、繊細かつ大胆な演技で表現している。
日常の中で時おり抱くある違和感。自分は何者なのか、なぜここにいるのか―。部屋の電気のスイッチを「パチン」と押した瞬間、抑えていた感情が彼女の中で弾ける。外へ飛び出すと、自分以外の世界が止まって見える。そんな街の中をゆっくりと駆けだしていくユリヤの表情が笑顔に変わっていく姿に世界が共感したのだろう。
建物の簡素化され白を基調としたパステルカラーなのに北欧ということからか少し暗さも感じる背景には、軽くて悩んでいるようで本当はそれほどでもない主人公を軽快なフィルム・スコアが後押しをしている。
※ヨアキム・トリアー監督によると、この映画は「ロマンティックコメディが嫌いな人のためのロマンティックコメディ」と呼ばれていることを前提にして本編を見てみるとあたしなんかの常識に拘束される喜びを大切にしている輩からするとそのパステルカラーさえも色あせて見えてくる。
リベラルで先進的な頭でっかちの優秀な人たちには、脳タリン・リンのあたしには付いて行けないのかもしれない。
トリアー監督が自らこの映画に対しての声明を出している。
For a long time I have wanted to make a film about love. One
that goes a bit deeper than normal onscreen love stories, where
everything is so simple, the stories so clear-cut, the feelings so
admirably unambiguous. A film that will look seriously at the
difficulties of meeting someone when you're struggling to figure
out your own life; at how irresolute and uncertain even the most
rational and otherwise self-confident people can become when
they fall in love; and how complicated it is, even for romantics,
when they actually get what they have been dreaming about.
男性監督と性別で呼べない彼のコメントより、「若い女性と彼女の視線を撮影しているので、見せることが重要でした。セックスシーンは男性の視点で撮影されることが多いです。その事を男性の監督はあまり気づいていません。女の子は(真正面から見ることを)許可されるべきだと思います。目の保養にもなります。」
感想としては...
ノルウェーのオスロまでは孔子の「30にして立つ」という言葉は遠すぎて届かないらしい... 少し嫌みでした。そんな冗談も言える肩ひじを張らない未来志向の女性目線の映画と言えるかもしれない。