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13回の新月のある年に Comments (3)
1978年の今作は実にプライベートな作品だった。
男性から女性に性転換した主人公が最期の数日間で過去を振り返る。彼を育てた修道院のシスター、妻と娘、そして性転換するきっかけとなった男を巡るが……
まったく救いがなかった。バイセクシャルなファスビンダー自身の体験(愛人の自殺)が今作を撮るきっかけになったとのこと。この成す術の無さは本物のはずだ。
ここまでストレートに死を意識させる作品を観たのは初めてかもしれない。ファスビンダーを通して見る世界はこんなにも暴力と雑音に満ち溢れ、苦しく映っているのか?冒頭のエルビラへの集団リンチ、屠殺、性転換という男性器の切断、ある男の首吊り。ファスビンダーが社会から受けた痛みを想像させるには充分すぎる描写だろう。
屠殺された後に映し出される牛が安らかに、ある意味神々しくも見えるのに対して、生きているエルビラは苦しくて惨めに見える。改めて考えると生きる事は楽しいことではないのかもしれない。牛を殺して食べて排泄して、気に入らない人間を排除する。人間の行動全てが依存的で惨めったらしい。
ファスビンダーは多分死にたがっている。死を止めないでくれと言っている。そんな気がした。
ファスビンダー自身のことや70年代の性的マイノリティなどなど、、、、。
唐突に踊り始めるアントン・ザイツ一座?のダンスシーンには、エルヴィラも踊るんかい!?
男たちに殴られ、男に逃げられ、家族は理解するが受け入れはしない、友達はエルヴィラそっちのけで追い出すようにアントンとイチャイチャしたり。
最後はみんながエルヴィラの元に集うが、悲しいよりも滑稽で哀しくなる。
エルヴィラにも難な性格の問題があるけれど、愛してあげて欲しい。
最後まで弱々しい彼女が、人生を見つめ直し取り戻すことはできない愛の物語。